平成21年度 春季関西学生法律討論会 論題


分野:刑法

 Xは、A、B、CおよびDの4名がパチンコ店「甲野」に侵入し、パチンコ店に取り付けられている基板の中にあるロム*を自分たちでプログラムしたロムに取り換え、翌日、「甲野」に客として入ってそのパチンコ台で大当たりを出して儲ける計画であることを知りながら、前期4名を自動車に乗せてパチンコ店まで走行し、B、CおよびDが「甲野」に侵入しロムを取り換えて出てくるまでの間付近に待機した。さらにXは、ロム交換後、Bが店外に脱出する際に、「甲野」に立ち寄った出入りの業者の従業員Eに取り押さえられたので、店外でBらに携帯電話で指示を与えていたAがBを奪還するためにEに暴行を加える意図であることを知りながら、Aの求めに応じてAを自動車に乗せ、BがEに取り押さえられた地点の近くまで走行し、AがEに暴行を加えている間その場で待機し、 AがBの奪還に成功するやいなやAB両名を自動車に乗せて走行した。その後、Xは、Aらをその自宅付近に送って行き、別れる際、Aから運転の報酬として2 万円をもらった。なお、Xは、この日Bらが持ち出したロムの処分等については、何も聞いていない。
 事件の翌日、「甲野」の店長Fは、Aらがこの日「甲野」から持ち出したロムには違法な改造が施されており、それがバレてはまずいと考え、これらのロムを買い戻そうと考えて、Aの友人のYに買取りのあっせんを依頼した。YはAに連絡を取り、Aがこれらのロムを20万円で買い取るよう要求していること、この値段で買い取らなければ他に転売すると述べていることを聞いて、これをFに告げた。Fは、これらのロムが他に転売されることによって違法改造がバレることを防ぐために、「甲野」の名義および計算で、要求どおり20万円で買い取った。
 XとYの罪責について論ぜよ(特別法違反の点は除く)。


*「ロム」とは、:リード・オンリー・メモリーの略。読み出し専用の記憶装置のこと。書き換える必要のないデータを保存するために用いる。パチンコ、パチスロに関わらず、プログラムがすべて書かれている基板の心臓部である(『広辞苑』(第6版)等参照)。

出題者 立命館大学法科大学院教授 松宮孝明