平成21年度 関西学生法律討論会 論題


次の場合における甲の刑事責任について論じなさい( 特別法違反は除く)。

 某日某市某町3丁目に在住のAは、本件当日午前7時頃、2丁目6番地所在の散歩道に設置されたゴミ集積所に出向き、自転車に乗ったまま、実家から出たゴミを捨てていた。
 折から、甲は通勤のため最寄りの駅に向かう途中、前方にAの姿を認めて不審に感じ、Aの様子を凝視したうえ、ゴミ捨てについて声をかけ、「ここは2丁目のゴミ捨て場なので、よそのゴミは捨てないでくれ。」と言ったところ、Aが「何だよ。なんか文句あるのか。」といって絡んできた。そこで、カッとなった甲は、突然Aの左顔面を一回殴ったため、Aは自転車もろとも路上に転倒した(「第1行為」とする)。
 甲はその場から逃げようという気持ちと通勤で急いでいたこともあって、駅に向かって走り出したが、Aは、やられたらやり返すという気持ちで、自転車を起こして乗車し、甲を追跡した。その場から約100メートル離れた地点で、Aは甲に追いつき、走っている甲の背後から、自転車に乗ったまま甲にいわゆるプロレスのラリアットの技をかけ、甲の後頭部付近に右腕を打ち当てた(「第2行為」とする)。すると、甲は前方に倒れたが、間もなく立ち上がってきて、所携の鞄の中から折りたたみ傘を取り出し、それをAの額に向かって力一杯数回振り下ろした(「第3行為」とする)。これによってAは、加療約3週間を要する顔面挫創、左手小指骨折のケガを負った。

出題者
関西学院大学法科大学院教授
荒川雅行先生